風邪の症状
「風邪をひいたかも」と思ったときに思い浮かべるのは、内科、小児科の受診かもしれません。
しかし、風邪の症状は、発熱はもちろんですが、「鼻水」「咳」「のどの痛み」も多く、ほとんど耳鼻咽喉科領域です。
耳鼻咽喉科では、鼻や喉(咽頭・喉頭)の中をファイバースコープにより直接観察することができます。粘膜の炎症や膿の状態、腫れの程度が正確に分かり、原因となっている箇所を直接治療し、早く症状を改善することができます。さらに鼻水の吸引、洗浄も受けられますので、その場での症状の緩和が期待できる点も耳鼻科の強みとなります。
お子さまが風邪を引いたとき、「熱は下がったけど鼻水や咳が治まらない」、「小児科で処方してもらったお薬が引き続き服用しているけど、効かなくなってきた」「風邪の後に耳をよく触るけど中耳炎かな」など、風邪の後も耳鼻咽喉科に係る症状で病院にいくべきか悩まされることが多いかと思います。
風邪が身近な病気であるがゆえ、「そのうち治るだろう」「忙しいから」と病院を受診しなかったり、通院を途中でやめてしまったりといったケースが見られます。
風邪をきっかけとして、中耳炎、副鼻腔炎、急性咽頭炎、気管支炎などの合併症を引き起こすこともあります。風邪かなと思ったときには必ず医療機関を受診し、きちんと治るまで治療を継続していくことが大切です。
風邪の治療では、風邪の経過や症状に応じてお薬を変更し、鼻水の吸引やネブライザーなどの処置を頻繁に行うことで、症状を緩和し十分に睡眠がとれるようにすることが大切です。症状が悪化しないようにコントロールしながら、患者さまお一人お一人の症状に応じた療法の選択をしてまいりたいと思います。
お子さまの気になる症状
お子さまは、ご自身の症状がうまく伝えられないため、保護者の方の小さな気付きがとても大切です。
お子さまのいつもと違う症状に気が付いたら、悩まずに耳鼻咽喉科へご相談ください。病気の原因が分かることで保護者の方の不安を取り除き、治療法についてご理解いただくことで、ご家族の快適な日常を取り戻すお手伝いをさせていただきます。
- お子様の気になる症状
- 鼻水が奥にたまる、鼻づまり、痰の絡む咳
- 口呼吸、いびき
- 耳を触る、聞き返す、返事をしない、テレビに近い
- 発熱があり水分や食べ物を摂りたがらない
風邪による鼻水・鼻づまり
ウイルス感染が原因で、鼻粘膜の腫れや、黄色く粘度の高い鼻水が奥に溜まることで、鼻づまりが起きます。小さなお子さまは鼻水がうまくかめないため、鼻水が出ていないようにみえても、奥に溜まっていることがよくあります。溜まった睡眠中に鼻水がのどに落ち、夜中に痰の絡む咳で何度も起きてしまう、朝方になると咳で目が覚めることもあり、保護者の方もなかなか眠れないこともあるのではないでしょうか。
治療といたしましては、鼻水の吸引やネブライザーによる処置を行います。朝夕など耳鼻科で吸引していただくこともお勧めいたします。奥にたまった鼻水が出やすくなるお薬も処方いたします。
アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎による口呼吸やいびき
アレルギー性鼻炎や、風邪により長引く鼻の炎症を放置し慢性可した副鼻腔炎により、睡眠中の口呼吸やいびきの症状が起きます。眠りが浅くなると、成長や発達にも影響があり、虫歯や歯並びの悪さの原因にもなりかねません。気づいたら早めに耳鼻科をご受診ください。
治療は、薬の服用と局所療法として鼻水や膿の吸引、ネブライザーによる処置、薬物療法を合わせて行います。アレルギー性鼻炎が原因の場合は、アレルギー治療も合わせて行うと効果的です。
耳の病気
言葉がまだの小さなお子さまの場合は、耳をよく触るなどが耳の違和感のサインとなります。またテレビが近い、声をかけても返事をしない等は聞こえが悪い可能性があります。保護者の方がよく観察し異変に気付いていただくことが大切です。また判断に困ることがあれば早めに耳鼻科をご受診いただくこともお勧めいたします。
- 耳垢栓塞
- 症状は、外耳道に耳あかが溜まることによる、耳の閉塞感や難聴です。
耳あかが溜まってしまう原因としては、耳掃除のし過ぎにより耳の中が荒れて耳あかが溜まりやすくなってしまう、体質的に湿った耳あかの出る方で溜まりやすいなどがあります。ただし小さなお子さまがいるご家庭での耳掃除は、耳掃除中に動いてしまう、ぶつかってしまうなどかえって危険が伴います。
当院ではファイバースコープで中耳の中をモニターで確認しながら耳掃除を行います。耳の中の状況についても丁寧にご説明いたしますので気になる場合は耳鼻科をご受診ください。
- 急性中耳炎
- 乳幼児や児童に多い病気で、症状としては耳の痛み、耳の聞こえが悪い、耳の閉塞感、耳だれ、微熱が続くなどです。小さなお子さまは不機嫌な状態が続くことも目安となります。
原因は、鼻から耳管を通じて中耳が細菌に感染し、炎症が広がることです。中耳炎の症状が発生する前に、風邪による症状として色のついた鼻水が出ていることがよくあります。
治療は、軽度の場合は中耳炎の原因となる鼻の治療で自然治癒する場合もございます。中程度以上の場合は、細菌感染に対して必要最低限の抗生物質を投与します。また、発熱時は解熱剤、耳だれがある場合は点耳薬も併せて処方いたします。
症状が続き、鼓膜が腫れている場合は、鼓膜に小さな穴を開ける鼓膜切開を行い、耳の中に溜まっている浸出液を排液できるようにします。術後は、点耳薬を服用いただき、普段通りの生活をしていただくことが可能です。
急性中耳炎が完治せず長引くと滲出性中耳炎を引き起こしてしまうこともあるため、抗生物質の服用期間を守り治療を続けていくことが大切です。
- 滲出性中耳炎
- 症状としては、難聴(聞こえが悪い)があり、痛みや発熱を伴わないため保護者の方による観察がとても重要になります。2歳~10歳までのお子さまに多く見られます。
原因は、急性中耳炎が治りきらず、鼓膜内の炎症が続くことで滲出液が溜まっていくことや、副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎により耳管からの空気の通りが悪いことがあります。
治療としては、耳管通気により耳管、鼓室粘膜の正常化、滲出物の排泄や中耳の換気を行います。
のどの病気
風邪の症状などにより、全身の倦怠感に合わせ、のどの痛みを伴う場合は、下記の病気かもしれません。
小児科に行ったけれどもなかなか改善しない場合などは、耳鼻科へもご受診ください。患部を直接治療することで症状を和らげることも可能です。
- 急性扁桃炎
- 症状としては、風邪の症状と同じように、高熱、悪寒や関節痛などがありますが、「のどの痛み」が強く、悪化すると食事が摂れない、水を飲むのもつらくなる場合もございます。扁桃に白い斑点のような膿が付着する、またいちご舌(舌に真っ赤なブツブツが出る)の症状も現れます。
原因は、舌の付け根の左右にある扁桃にウイルスや細菌が感染し炎症を引き起こします。扁桃は免疫組織のため、風邪や体の疲れ、ストレスにより免疫力が低下すると炎症を起こしやすくなります。まだ免疫力の低いお子さまによく発症します。
治療は、溶連菌などの細菌感染が原因の場合は抗生物質を服用します。またのどの痛みを和らげる解熱鎮痛剤を服用します。抗生物質は服用から3日から4日で症状が治まりますが、途中で中止すると体内に細菌耐性ができてしまうことがあるため、最後まで服用いただくようお願いいたします。
抗生物質を服用しても改善しない場合は、ウイルス感染の原因が考えられますので早めにご相談ください。
- 急性咽頭炎
- 症状としては、のどのイガイガや乾燥感、咳や痰、声がれ、発熱等があります。
原因は細菌やウイルス感染による咽頭(のど)の炎症です。
治療は、炎症を抑えるため、トローチ剤やうがい薬の使用や、痛みを和らげる解熱鎮痛剤を服用します。溶連菌などの最近感染が原因の場合は、抗生物質を服用します。